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▼国分寺崖線裾野の湧水を集めて流れる野川の最源流「真姿の池湧水群」の観測日誌 ▼ガイド・観察日誌・トピックス・インフォ→構成は「サイトマップ」「真姿の泉TODAY index」参照

[考察-1]湧水量の把握への取り組みと成果 ブログトップ

湧水量の把握への取り組み-その1 [[考察-1]湧水量の把握への取り組みと成果]

真姿のいずみ観察会「地域の眼」では、湧水量のおおよそを把握する取り組みを行っています。
ほぼ毎日行っている水路「水深」の計測と、第一堰から流れ落ちる流水の本数と強さを「流出量指数」として判定・記録していることはこのブログでもお馴染みですが、「3-」「3」「3+」のように表記する「流水量指数」は、このままの形ではグラフ表記することができません。
そこで、私たちはこの「流水量指数」を「流水量得点」に換算することでグラフ表記を行えるようにし、この「流水量得点」と「水深」の計測値の相関関係を検証したり、国分寺市が行っている「流水量計測」の測定値にトレ-スして「流水量指数」や「流水量得点」から湧水量のおおよそを割り出す取り組みを行っています。

この取り組みについて、何回かに分けてレポ-トをいたします。

■素朴な疑問・・・湧水量ってどのくらいなの?
毎日水辺で観察ノ-トを広げ、水路の水深や水温を計っていると、何人もの人が声をかけてくださいます。
一番多いのは、「水質検査をしているのですか?」というお尋ねです。水を汲んで行く人にとっても、散歩に来る人にとっても、遠方からはじめて来たという方たちにとっても、当世、まず気になるのが水質。「この水は本当にきれいなの?」「汲んでいる人がいるけど飲めるの?」というのが一番の疑問なのでしょう。

「水質検査をしているのですか?」という質問と同じくらい多いのが、「湧き水の量は変わるんですか?」「今、水の量は多いのですか?」というような、水量に関するお尋ねです。

近所の人や水汲みに来る人たちには、この湧水の量が一年の中で大きく変化をすることはよく知られていますので、この質問は主に観光に訪れた方たちからの質問です。
玉石擁壁の下から水が湧き出ているところは、観光の方たちにとっては見ただけではわかりにくいようですが、湧き口のすぐそばが堰になっているため、水がジャンジャン湧いていることが誰にでも実感できます。
水質だけでなく、水量のことに関心が向くのは、この湧水地の堰の形状によるところが大きいようです。
そして質問の中には、「今、どのくらいの水量なんですか」というズバッと直球の質問もきます。
つまり、毎秒何リットルとか、毎分何リットルとか、日量何トンとか、そういうことを尋ねる方もいらっしゃいます。

■湧水量把握への挑戦
真姿のいずみ観察会の活動の目指すところも、まさにこの「湧水量を把握する」ということです。
もともとは、崖の直上の水みちの上に大規模マンションが建設されることになり、砂礫層の中にまで基礎杭が打ち込まれる工法が採られることになったため、湧き水への影響が心配されたことが始まりでした。
このことで、これまで癒しの場所だった湧水は、癒されるだけの場所ではなくなりました。

建築物の影響は、すぐにあらわれるかもしれないし、長年かかってジワジワあらわれるかもしれません。
マンション建設以外にも、いろんな影響があるかもしれません。
いずれにしても、湧水量を把握しないことには始まりません。

ところが、これが難関です。

●国分寺市の湧水流量観測の利点と弱点
湧出口と水路の所有者である国分寺市は、手計りによる計測と自動計測器による自記計測の二本立てで湧水量の観測を行っており、この記録を年度ごとに、「湧水地等の水量・地下水位調査委託報告書」にまとめていますが、一般市民は、一年待たなければ記録を見ることができません。(市のオ-プナ-や図書館で見られます)

一年待ってでも私どもはこの報告書を閲覧し、過去の報告書も含めてコピ-を取り、大いに利用しています。
しかし、こうして利用することによって、市の測定には、実はちょっと弱点があることもわかってきました。

手計りによる計測は、昭和61年の暮れに開始されたもので、観測の年月も長く、また測定値にはかなり信頼がおけるものですが、実施は月に一回です。大変貴重な記録ではありますが、月に一回しか実施されていないため、降雨によって日単位で湧出量がどのように変化するのかということは、この記録からはわからないのです。

自動計測器による自記計測について、詳しくは後述しますが、実は真姿の池湧水そのものの流量を計測しているわけではありません。
下の地図は、国分寺市が真姿の池湧水関連の観測を行っている場所を示したものですが、自記計測を行っているのはA地点(万葉植物園湧水湧出口の近く)とB地点(元町用水下流)の二箇所で、「B地点で測定された流量」から「A地点で測定された流量」を差しい引いた量を「真姿の池湧水の流量」と算定しているのです。
湧水観測ポイント(観察会と国分寺市).GIF

B地点までの水路の総延長は400メ-トル以上になりますので、B地点での計測値は、大雨の時は降雨が含まれ、日照りの時は目減りします。
さらに、A地点(万葉植物園湧水湧出口に近く)は樹木に覆われた場所なので落ち葉が多く、堰にたまった落ち葉が水位を上げてしまいます。秋から春にかけて落ち葉がたまりっぱなしになっていると、実際の流量はわずかでも、まるで大湧出したようなとてつもない水量が算定されてしまうのです。
真姿の池湧水の流量は「B-A」の差し引きで算定されますので、Aの算定値が膨れ上がれば、真姿の池湧水の算定値は少なくなります。このため、手計り計測値と比較してみると、大きな差が出ることがしばしばあります。

市の湧水観測には、残念ながらこうした弱点があります。
5年、10年、20年と長期スパンで湧出量の変遷を見るには意義深い観測ではありますが、降雨によって日単位で湧出量がどのように変化するのかを把握するには向いておらず、また、湧水に異常の兆しがあらわれたとしても、それを把握しにくい仕組みになっているのです。

●市民の手でできること
こうなると、市民サイドでも、何とかして出来ることを探ってゆかねばなりません。
マンション建設の影響を追跡するという目的だけではなく、季節によって水量が大きく変化する湧水が、今、だいたいどのくらい出ているのかということがわかるようになったらどんなにいいでしょう。

ところが、水量そのものを手計りで実計測する方法は、やってやれないことではないのですが、毎日なんてとても無理ですし、たまにやるにしても実はこれ、なかなか大変なのです。
マンション建設の事業者が第二堰の下に設置した流量観測用の四角堰を利用して、この堰から流れ出る水の量を計る方法を私たちも何度かやってみました。
その方法をちょっとご紹介してみましょう。

一人が長靴をはいて水路にはいり、堰の下に立って大きなビニ-ル袋の口を左右にしっかり開いて持ち、もう一人がストップウォッチを持ちます。
ストップウォッチ係が時計のスタ-トボタンを押すと同時に「ハイッ」、同時に袋係が堰に袋の口を密着させて流水を袋に貯めます。
ストップウォッチ係が2秒(場合によっては1秒)たったところで「ハイッ」、同時に袋係が堰から袋を離します。(ストップウォッチのかわりに、メトロノ-ムを1秒刻みにあわせて鳴らすという方法もなかなか実用的です。もちろん、ストップウォッチとメトロノ-ムの併用も)
袋にたまった水を容積のわかるバケツなどの容器にあけて量を量ります。この量を「計測にかけた秒数」で割れば「毎秒の流水量」、毎秒の流水量に60をかければ「毎分の流水量」が出ます。
この作業を5回ほど繰り返し、特に誤差が大きいものはオミットし、平均を出したものをその日の流水量とします。

夏の暑い日など、なかなか楽しい作業ですが、冬場は考えただけでも怖い作業です。
そしてビニ-ル袋に入れた水はとても重たい。余談ですが、私はこれでギックリ腰になりました。

さらに、この作業が素人でも何とかできるのは、湧水量が少ない時だけです。
真姿の池湧水は、第一堰から2筋しか流れていないような少ない時でさえ、第二堰下の毎分の水量は200リットル以上あるのです。毎分200リットルといえば、1分間に20リットル入りのポリタンクが10本、満タンになるというすごい量です。湧出量が極少の時でさえ、2秒間計測で7リットル近い水が袋にたまります。
第一堰からの流出が3筋、4筋となると、毎分の流量は400リットル、500リットル、600リットルと増えて行き、一瞬のうちに袋は満タン、さらに毎分1トン、それ以上となると、袋による手量りは不可能となります。

というわけで、市民による手動計測は、年に数回、季節のよい時期を選んで実施することは可能でも、連続して行うことはとても無理なのです。

必要なのは、毎日の連続した記録です。
そのために、何とか市民の手でできることを、ということではじめたのが、「水深」の計測と「流水量指数」の判定・記録です。そして後に、この流水量指数を得点化し、「流水量得点」に換算するという試みもはじめました。

■「流水量指数」について
「流水量指数」は、真姿のいずみ観察会が考案した湧水量の判定・記録方法です。
真姿の池湧水の第一堰には高さの異なる12本の擬木が並んでおり、擬木の隙間は13箇所。
堰の擬木の隙間に何筋の流れがあるかを記録することで、湧出量の相対的な変化が記録できます。
第一堰擬木配列図.gif (クリックで拡大)

「流水量指数」は「1-」「1」「1+」・・・・・・・・「13-」「13」「13+」まで、全部で39段階となりますが、一番東端の隙間「キ」は隙間の位置が高いので、これまで「キ」から流出したことはありません。仮に「キ」から流出することがあるとすれば、擬木全体を全面越流するだろうと考えられ、指数であらわす意味がなくなるので、「12-」「12」「12+」までの36段階が実質的な流水量指数となります。

■「流水量指数」を「流水量得点」に換算する
●「流水量指数」を得点化する意義
「流水量指数」を考案したことによって、湧出量の実量を計測しなくても、湧出量の相対的変化を記録することができるようになりましたが、「3-」「3」「「3+」のような「指数」のままではグラフ表記することができません。
そこで、「流水量指数」を「流水量得点」に換算することを考えました。
「指数」を「得点」に置き換えることによって、「流水量得点」と「水深」の相関関係や、「流水量得点」と「国分寺市による流量測定」の相関関係を調べることが出来るようになりました。

●得点化の方法
流水量指数「1-」を流水量得点の「5点」とし、段階がひとつあがるごとに5点ずつ加算。流水量指数の最高の「12+」の流水量得点は「180点」となります。

下の表はその換算表。
換算表.GIF(クリックで拡大)

●「流水量得点」を5点刻みとした理由
(1)「流水量指数」との混乱を避けるため
「流水量指数」には1~13までの数字が使われているため、「流水量得点」を1点刻みにすると混乱する。
(2)グラフ表記で比較しやすくするため
流水量得点を5点刻みにすると、最高値が180点となる。水深の計測値はこれまでの最高が180mm、日降雨量の最大値が200mmなので、流水量得点と水深と日降雨量をひとつのグラフに表記する際、縦罫の目盛りを共有でき、比較しやすくなる。
(3)5点刻みの「流水量得点」に一定の係数を掛けることによって、湧出量実測値の近似値が得られるため。
流水量指数が「2」の時、国分寺市の手計り計測による毎分の流量が250リットル前後となっていることが多く、また、流水量指数が「3」の時、国分寺市の手計り計測による毎分の流量が400リットル前後となっていることが多い。 「流水量得点」を5点刻みにしておくと、流水量指数「2」の流水量得点は「25点」、流水量指数「3」の流水量得点は「40点」となり、それぞれの得点を10倍すると、国分寺市の手計り計測による毎分の流量の近似値となる。 (係数10からはずれる範囲については、流水量指数ごとに係数を定めることも可能。)

■「流水量得点」と「水深」との相関関係を見る
●折線グラフで見る
「流水量得点」は、「第一堰に何筋の水流があり、その水流の強さはどうか」という状態を「流水量指数」で表したものを単純に得点化したものなので「計測値」ではありません。一方の「水深」は計測値です。
この関係がどのようになっているかを、まず見てゆきます。

以下のグラフは、観察を開始した2004年4月から(水深は2004年6月から)2006年初頭までの基礎デ-タを2006年春にグラフ表記したものです。

折線グラフ2(流水量得点・水深・降雨慮・手計り).GIF
「降水量」と「流水量得点」と「水深」には、おおむねきれいな相関関係が見られますが、グラフの黄色い点線円で囲んだ部分のように、降雨が減っているのに第一堰からの流出の状態は変わらず、水深だけが下降しているところがあります。
これは大湧出の後、降雨が落ち着き、湧出量が少しずつ減少して行く過程でしばしば見られる現象です。

●分布グラフで見る
流水量得点と水深の相関関係.GIF

流水量得点と水深の相関グラフです。
ほぼ一定の幅で相関関係が見られますが、ピンク色でマ-キングした箇所のように、相関関係から飛び出している箇所も見られます。
ピンク色でマ-キングした箇所は、上の折れ線グラフの点線円で囲んだ部分と同じ時期です。

●相関関係から外れている部分の原因
そこで、飛び出しが大きい3ヶ所について、時期と状況を特定し、相関関係からはずれた原因を考えてみます。

流水量得点と水深の相関関係(はみだし部分の時期特定).GIF

「1」は、湧出量の多い時期、水深はどんどん下がっているのに、第一堰の流出本数が一向に変わらない状態。
「2」と「3」はともに湧出量が少ない時の対照的な現象で、「2」は湧出量のわりに水深が低めに出ている状態、「3」は湧出量のわりに水深が高めに出ている状態です。

「1」は、大量湧出の時期が長く続いた後、減少が始まった時にしばしば見られる現象。
長期にわたる大量湧出で第一堰の隙間のゴミや異物が流されるために流出点が低くなり、湧出量が減っているにもかかわらず、流水の本数が減らない。また、第二堰のほうでも隙間のゴミや異物が流されるために流出点が低くなり、第二堰上で計測している水深がどんどん下がるという現象が起きているものと考えられます。

逆に、少雨傾向の時期に突然まとまった雨が降ると、湧出の正味よりも水深が高めに出る傾向があるようです。雨が降らず湧出量が少ないと、堰からの流出に使われていない擬木の隙間にゴミや異物がたまり湧出点が高くなっています。そのため堰上の水深が高く出るのではないかと考えられます。

「2」がそのケ-スに当たっていると思われますが、「3」はまったく逆のことが起こっています。
そこで「3」の時期を特定してみると、2004年の入梅前後の時期にあたっていました。2004年の春は空前の少雨となり、真姿の池湧水の水路は大量の藻が発生して見るからに汚らしい様相となっていた時期です。このため、東隣の農家が第二堰上をたびたび掃除していたことを記憶しています。おそらく、この掃除によって第二堰にひっかかった藻やゴミが取り除かれ、掃除の後しばらくの間、水深が低くなっていたのではないかと考えています。

堰には長年の間に苔が巻いており、苔生した堰は生き物です。
極端な少雨や極端な大降雨の際は、しばしば相関関係からはずれる現象が起きるようです。
しかし、このような極端な時期を除けば、おおむねきれいな相関性が見られます。
相関性からはずれる現象の原因については、2006年初頭の段階ではまだ基礎デ-タ数が少ないため断定的なことは言えませんが、今後、これ以降の基礎デ-タを含めて解析して行きたいと考えています。
また、これまで5ミリ刻みで記録していた水深を1ミリ刻みにすれば、分布の帯の幅が狭まり、相関関係がより明確になるものと考えています。

(その2に続く)

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